2025年06月03日
孤立する高齢者の現状と、住宅・地域の満足度について
遺品整理の業界でよく言われるのが「一つとして同じ現場はない」ということです。
遺族の方にあまり根掘り葉掘り聞くわけにはいかないので詳細はわからないことが多いのですが、ゴミ屋敷のようになっているお部屋から整然と片付いたお部屋、若い人が住んでいたと思われるお部屋まで、さまざまなケースがあります。しかし、やはり一番多いのは、近年問題になっている「独居老人の孤独死」と思われる現場です。何日も誰にも発見されず、身内の方や遺品を引き取る方もなく、我々のような遺品整理業者に依頼が来るということも多々あります。
誰もが歳を取るのですから、自分の身内や自分自身が「独居老人」になる可能性は誰にでもあります。問題は、独居になることではなく、周りに家族や友人・知人がいるか、生活環境に不満がなく快適に暮らせているかどうか、ということです。友人や知人がいなく孤立してしまったり、住居や生活環境が不便であまり外に出なくなってしまったりして、心身の健康を損ね、孤立死してしまう方が後を絶ちません。
孤立する高齢者
昨年、内閣府より発表された「令和6年版高齢社会白書」によると、コロナ過の影響もあってか、5年ほど前の前回調査より高齢者の孤立化は進んでいるようです。親しくしている友人・仲間がいるかについて、前回調査と比較すると、「たくさんいる」又は「普通にいる」と回答した割合が大きく低下、また人と話をする頻度についても、前回調査と比較すると、「毎日」と回答した割合が大きく低下しています。
「高齢社会に関する意識調査」より
〇 調査対象者 :60〜99歳の男女
〇 調査時期 :令和6年2月27日〜令和6年3月5日
〇 回収数 :3,329人


さらに、ひとり暮らしの人についてみると、人と話をするのが「毎日」と回答した割合が、ひとり暮らし以外の人の半分以下となっていることがわかります。

高齢者の一人暮らしの方のうち、実に半数以上の方が2、3日に1回かそれ以下しか人と話す機会がないのです。そして3割以上の方が1週間に1回かそれ未満しか話をしないということが明らかになりました。
誰とも会話をしない、近所づきあいをしない、困ったときに頼る人がいないといった、社会から孤立した状況が長く続くと、生きがいを喪失したり、生活に不安を感じることにもつながると言われています。実家に親や祖父母が1人で暮らしているという方も多いと思いますが、1週間に1度は電話をかけて様子を伺ってみると良いかもしれません。

また、子どもとの同居・近居については、年代が高くなるほど同居の意向を持つ割合が高くなっていることがわかります。
住宅・地域の満足度
現在の住宅の問題点についてみてみると、「住まいが古くなり、いたんでいる」、「地震、風水害、火災などの防災面や防犯面で不安がある」等と回答した割合が高いことがわかります。
全体の30%ほどの方は、「何も問題点はない」としていますが、それ以外の方は住宅について何かしらの不満・問題を抱えていることがわかります。賃貸に居住している人は経済的負担のほか住居の狭さや使い勝手の悪さをあげているのに対して、持家に居住している人は防災面の不安に加えて住宅が広すぎる、部屋数が多すぎるといった問題点がありました。

また、居住している地域の生活環境については、「日常の買い物に不便」、「医院や病院への通院に不便」、「交通機関が高齢者には使いにくい」と回答した割合が高いことがわかります。高齢になり車を運転しなくなったり、足腰が弱ってくると、買い物や通院に出やすい環境が望ましいと思われます。

まだまだ続く「高齢化社会」
少子化が進む日本では、総人口はピークを過ぎ減少方向にあります。しかし医療の発達とともに寿命は延び続け、65歳以上人口が総人口に占める割合(高齢化率)も上がり続けています。今の高齢者世代は現状の生活に「満足している」という方も多いですが、今後は問題点や経済面での不安を抱える高齢者がさらに増えることが考えられます。
高齢者が暮らしやすい住宅や環境を整えること、高齢者を狙った「特殊詐欺」への対策など、政府の対策も必要ですが、自分たちでできる対策をすることも重要です。ご近所づきあいを心がけたり地域のコミュニティーに出かけ友人を作ったり、家族とこまめに連絡を取り合ったり体力づくりをしたり、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
各地の地域包括支援センターが、孤立老人の支援窓口として機能しています。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などの専門職が連携して、高齢者とその家族の生活のための支援を行っています。さまざまなイベントや、無料相談などを行っていますので利用してみてください。地域全体で高齢者の孤立を防ぎ、安心して暮らせる環境を整備していくことが重要です。
出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」